この現場は年1回実施する定期検査(法定検査)で制御器(電動機主回路およびブレーキ用接触器)に要是正が発生していました。定期検査の要是正とは「修理や部品の交換等による改善することが必要な状態」を指します。今回ご紹介する現場で、要是正の対象となった部品(接触器)は、既存不適格(※1)にはならないため、改善が必要な状態でした。
(※1)既存不適格:昇降機等が建築確認された時点の法令に基づいて建築した建築物(既存建築物)において、その後に定められた法令の規定が及ばないもの
定期検査でこの制御器が要是正となった理由は、製造者が指定する交換基準(使用回数・使用年数)を超過したことによるものでした。交換基準を超えて使用を続けていると、接触器の接点に溶着や接触不良等の不具合が生じる可能性があり、最悪の場合、かごを正しく制御することができず、停止する位置で止まらないだけでなく、停止ボタンを押しても動作が戻らずに動きっぱなしになってしまう危険性が生じます。そのため、かごが動き続けた結果、かごやカウンターウェイトが建物の床やマシンビームに激突する恐れや、戸が開いた状態でかごが動いてしまう戸開走行事故等の重大な事故に至る恐れが生じます。
また、今回対象となった制御器は、フェールセーフ設計(※2)に該当せず、万が一接触器に溶着が発生した場合、自動的にかごを制止させる仕組みになって「いない」ことからも交換が必要となりました。
(※2)フェールセーフ設計:ここでいうフェールセーフ設計とは、それぞれの接点に溶着等の不具合が生じた場合でも運転の命令と接点からの信号やブレーキの作動状態等との不整合を検知するなどを行い、自動的にかごを制止させる設計のこと
ところが今回の制御器(接触器)は製造されてから長年経過しており、同型品はすでに生産終了している状態で、また、後継品もない状況でした。
そのため、小荷物専用昇降機が全体的に老朽化していたこともあり、要是正となっている制御器だけでなく、制御機器一式での制御リニューアルをご提案させていただきました。新しい制御機器は、フェールセーフ設計を組み込んであるもので、安全性も高くなることからも、制御リニューアルでの修繕が決定し、工事を実施いたしました。
このように年数が経過している部品は生産終了している場合もあり、対象部品だけでは交換できないケースもあります。また、制御盤に貼ってある銘板から、メーカーに問い合わせようと思ったら廃業されていた、というお問い合わせもいただきます。そのような場合でも弊社では過去の様々な事例から、お客様に合った修理方法をご提案させていただきます。ご不明な点や不安なことがございましたらお気軽に弊社マイクロエレベーターまでご連絡ください。